ほとんどが熱帯起源の屋内性のゴキブリたちは、寒がりで、通常ならば日本の冬は越せません。世界的にもっとも普通に見られる小型のチャバネゴキブリは、
日本に侵入した時期が一番早く、ほぼ江戸時代の中期ころと考えられています。
しかし、このゴキブリは特に寒さに弱く、一年中暖房が完備した飲食店や船舶などの常連ではありましたが、一般家庭にはほとんど住み着くことができませんでした。
それが、近年は暖房設備の進化によって、かつては分布すらできなかった北海道を含めて一般家庭でも普通に見られるようになりました。
皮肉なことに、チャバネゴキブリの勢力拡大は豊かな生活の証拠として喜ぶべきことなのでしょう。
また、屋内性のゴキブリのなかには、もうすっかり人間との同居生活に適応し、本来の原産地がどこなのか定かではない種類までいます。
彼らが「人造害虫(マンメイドペスト)」と呼ばれているゆえんです。
以前、ある生物学の大家がゴキブリのあまりの横行に、「人類のあと地球を継承するのはゴキブリであろう」との新説を唱えたことがあります。
しかし、決してそうはならないでしょう。試しに、冬のさなかに数日間暖房を切って窓を開けておけばゴキブリは全滅します。それが彼らの本来の姿です。
屋内性のゴキブリはまさしく人類とは“運命共同体”です。生活を依存している人間の文明が失われたら彼らの生活も終わり、再びもとの自然界に戻ることすら難しいことになるでしょう。
その前に、人類が次の時代をほかの動物にゆだねるような、そんなりっぱな滅亡の仕方ができるかどうかの方が問題かもしれません。
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