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シラミとは
ヒト専門のシラミには、アタマジラミとコロモジラミと、次回に紹介するケジラミとがある。アタマとコロモは色も形も違い、かつては別種とされていたが、アタマを毛布にたからせて飼うと、やがてコロモに変わることがわかり、今日では同種の別系統として扱われている。ともに成虫は1カ月ほどの寿命の間に300卵内外を生み、幼虫は吸血しながら3週間ほどで育つ。ヒトの体温に守られ、ヒトとともに世界を駆けめぐり、現在、もっとも広い分布圏を持つ昆虫となっている。
人体でしか生活できないので世界中の人が自前のシラミだけを全部殺せば、この種は絶滅するのだが、絶滅に程遠い現状はこれがいかに難事かを物語っている。
古来、ノミは王侯美女を選ばず、シラミは下賤な者にしかたからないと伝えられるが、これには一理がある。ノミはみかけによらず進化した高等な昆虫で、幼虫はゴミの中の有機物などを食べて育ち、成虫になってからはじめて寄主の動物に取りついて吸血する。だからだれがノミにたかられても不思議はない。これに対して、シラミははるかに原始的な昆虫で、成虫も幼虫も生涯を人血に依存して生活している。このため、不潔なヒトこそシラミの上客で、そういう生活をしいられた戦時中の学童疎開や、シベリア抑留の思い出は、空腹とともに、シラミをつぶした日々につながることになる。
平安時代の恋物語も、そんなにロマンチックだったはずがない。業平君も光源氏君も、シラミを抱えての痒い逢瀬だったことであろう。
蚤(ノミ)のあと、これも白きは美しき(一茶)
−これが「シラミのあと」では句になるまい。−
夏衣いまだ虱(シラミ)をとり尽さず(芭蕉)
−俳聖も旅がちで、なるほどそうであったことであろう。−
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